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《散歩でさんぽ》 道草129号より

20191114 日更新

<散歩でさんぽ>
鳥取県からご依頼をいただき『音楽のチカラ』について講演してきました。音楽で起こった奇跡の実話や音楽が身体に起こす反応など色々な資料を準備し、実践をいくつも取り入れる内容です。音楽を使った実践は普段からよく行うことなので、あまり大層に考えていなかったのですが、いざその「選曲」となるとこれに一番時間がかかり、考えが堂々巡りして講演前夜まで決定することができませんでした。 というのも、依頼を受けた団体の参加者は20代から60代の働き盛りの男性で、平均すると40代前半という話、その方々みんなが大声で口ずさめる歌が全くと言ってよいほど思い浮かびません。  
ひと昔前は国民的大ヒットと言われる曲がたくさんありました。テンポの良いものに的を絞っても、「上を向いて歩こう」や「いつでも夢を」「真っ赤な太陽」「およげたいやきくん」などドンドン浮かんでくるのですが、現代では広い年代が楽しめる歌が見つからないのです。 みんなが同じものを歌えた頃、それはきっと一家団欒の中心にテレビがあった時代で、否が応でも一台のテレビから流れる同じものを見聞きしていたから、広い世代で楽しめる歌が生まれて来たのでしょう。今、CDにとどまらずスマホにまで音源が多様化したことで、音楽がより個人のものになったのだと感じます。 私は普段、地域の高齢の方が集われる場でお仕事をいただくことがあり、その選曲にも時間をかけて悩むのですが、年齢の高い方に標準を合わせると、少し若い方でも歌ったことはないけれど知っておられるという場面に出くわすことが多く、今回ほど選曲に悩むことはありませんでした。「音楽」が個人にうんと身近く深く関われるようになり、その楽しみ方がすっかり変わったのだと実感します。ならば唱歌でもと思いたいですが、20代にはそれすらも望めず難しい時代です。講演は一応無事終了し、帰りは鳥取砂丘と竹田城へまわり道。竹田城が雲海に浮かんでいる風景をバッチリ見えたのが何よりのご褒美になりました。超早起きした竹田城の雲海の面白話はまた聞いてください。
 ようやく木々が色づき始めました。紅葉に彩られる好季節を、どうかおすこやかにお過ごしくださいますように。
            東岸 佐優里