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《散歩でさんぽ》 道草126号より

2019824 日更新

私は今の地域に住んで15年になります。住み始めた頃、年に2回の集金日は早朝から太鼓が鳴ることにびっくりしました。町は25軒程なので区長さんが叩く公民館の太鼓も全戸聞こえます。さすがに現在では太鼓のお知らせはなくなりましたが、そのくらい古い地域なので月当番も歴史を感じる大きな木箱がその札代わりです。ある時気になって、そっと箱を開いてみました。すると中は戦時中の資料になるものがたくさん入っていました。「配給集金帳」と書かれた帳面には下駄、木綿糸、石鹸、木炭やマッチなどの日用品の他に、食料品では花カツオ、みかん、出し昆布、鮭に至るまで様々な配給品が載り、それを誰が購入したかの記録も残っていました。「物がない時代」とはよく聞きましたが、こんな風にしか入手できなかったのだと書かれた文字を見て実感します。洋菓子の配給の時もあり、当時それを手にした子供達はどれほどそれが大事で、どんな思いでお菓子を口に運んだのだろうと想像してしまいます。  さらに、昭和18年の回覧板が残されており「警報伝達訓練ノ実施」のお知らせとして、「来ル六月八日、半鐘又ハ サイレンヲ以って警報伝達ノ訓練ヲ実施シマスカラ、ヨク聞キ分ケ慣レテ下サイ。」と書かれ、警戒警報、空襲警報、また空襲警報解除を知らせる時間が1日8回分も記されていました。回覧板の最後には「足らぬ足らぬは 工夫が足らぬ」という御国からの言葉もあります。 数々の資料を手にして私は気持ちがズッシリ重くなりましたが、こうした生活に耐えてくださった方々のお陰で今の暮らしがあるのだと、心の芯から感謝の気持ちでいっぱいになりました。
最近では断捨離がブームになり、私も家族に恐れられるほどの断捨離ぶりを発揮していますが、当時を知る先輩からみれば、その姿は大層愚かなものと嘆かれるでしょう。無言の木箱の中から多くのことを教わる機会となりました。 
今年の夏の暑さは別格に感じます。美味しいものをこまめに召し上がって夏バテされませんように。
ありがとうございます。      東岸佐優里