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《散歩でさんぽ》 道草116号より

20181011 日更新

美味しい季節がやってきました。食いしん坊の私には季節は全く関係ないのですが、それでも果物や野菜がたくさんあって目移りします。春夏秋冬を問わず「好きな食べ物は何?」と聞かれたら一番に「柿」と答える私には、この時期、あちこちの柿の木が気になって仕方がありません。我が家の隣の畑にも大きな木があり、美味しい時期になると枝を折って沢山の柿をくださっていたのですが、その方がご病気になられ、隣にあるのに遠くに感じる木になりました。いくら好きでも隣から手を伸ばすわけにはいかないとずっと諦めていたのですが、この夏、思い切ってその方の息子さん夫婦にお願いをしました。「食べられたら全部でもどうぞ。」と笑顔でお許しいただいたので、今か今かと心待ちに実がなるのを待っていたのですが、今年成ったのは1個だけ。葉の様子がおかしいのです。まさか1個の貴重な柿に手を出すわけにはいかない。持ち主の方が仏様にお供えされるかも知れないとそこはグッと我慢。しかしながら、一向に柿を眺めておられる様子もなく、代わりに台風がなんども襲来。私は柿が心配でたまりません。風雨の中でも雨戸を開けて無事を確認するので、「もらって来たげよか?」と家族に笑われています。そして毎日毎朝、木にぶら下がる神々しい橙色の姿に手を合わせて安心するのです。ああ、早く隣の人が地面に落ちるまでにどうかどうか味わってくださるようにと祈るばかりです。「もし落ちたら拾いに行くから」と柿さんには言ってありますが、あの柿を食べたらきっと私は涙が出ると思います。 
食欲の秋、皆様も存分にお楽しみいただきますように。東岸 佐優里