topics

《散歩道でさんぽ》 道草96号より

2017221 日更新

<散歩でさんぽ>
ストリートピアノの番組を観ました。宮崎県の繁華街に、24時間誰でも自由に弾くことができるピアノがあり、様々な人がそこに集まります。中心市街地の活性化のため、広場を行き交う人々が集うことができる新たなスポットにしようというので、廃墟されたピアノを蘇らせ設置したものだそうで、番組はそのピアノをめぐる72時間のドキュメントでした。
 まずは孫の所へ行くというバス待ちの老人が指1本で童謡を弾いていました。そして忘年会帰りの会社員がとても上手に演奏をはじめると、通りがかりの犬まで演奏に参加して盛り上がる光景も。その翌日は「ピアノの設置から毎日通い、独学で練習した」男性が奏でる音にどこからか集まった人々の喝采が響きます。そこにはストリートピアノならではの物語があり、曲も伴奏の背景もいろいろです。だんな様を亡くされて60歳から習い始めた女性や、遠くふるさとを思って涙を流す代わりにピアノを弾く女性もいます。次々と広場を通る人が吸い寄せられるように鍵盤を叩いていくのが面白く、それが上手とはいえない演奏だったとしも、聴き手の笑顔からは満足感が伝わってきます。やはり生の音色は人の心を捉え、聴き手の心に入り込んでくるのだと思いました。この音楽の散歩道もこの半年間、「楽器をより身近なものに、より生に近い音で」というテーマで、三味線、オカリナ、サックス、トランペット、二胡、箏、尺八をお楽しみいただきました。来月からはまた雰囲気を新たに、小ホールにてお待ちしています。どうぞよろしくお願いいたします。
                                   東岸佐有里