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《散歩道でさんぽ》 道草93号より

20161129 日更新

先日、私が大好きな大先輩の女性(80歳)とゆっくりお話しする機会がありました。その折に体調の異変を感じ、かかりつけ医に行かれた時の話をうかがいました。症状を聞いたお医者様が「検査の必要はない」という判断と共に、診察室にある掛軸を見ながら「ああいうことですよ」と指をさされたとのことです。そこには、良寛の「病む時は病むがよく御座候、死ぬ時は死ぬがよく御座候、これ病死よりすくわる妙薬にて御座候」という句が書いてあったというのです。その話を聞いた私は驚きました。「治療しなくてもいいってこと?医者としてはずいぶんな話じゃないですか?」と言う私にその方はケロリとして「私は名医だと思ったのよ。そんな風に言われるまでは少しでも若い頃のように元気ハツラツでいたいと思っていたけれど、それはムリなこと。“老いを認めなさい”とお医者様に言われたのだと思った。そうしたらめまいも不調もすべて受け止めることができ、症状があまり気にならなくなったのよ。」とおっしゃいました。
私達は病や老いる現実に少しでも目をそむけたい思いで暮らしています。しかしながらお医者様は日々、大勢の患者と向き合っているからこそ伝えたい言葉だったのではないかと思います。もし私が同じ言葉を言われたらどうだっただろう?きっと腹を立ててしまったかも知れません。でもさすが大先輩。お医者様や良寛の言葉を意味深くとらえ、おおらかな心で受け止めておられる姿にまた学ばせてもらいました。
今年も残りひと月半になりました。今の時期は冬至まで疲れを溜めこんだりするともいいます。皆様も心身ともに大切にお過ごしいただきますように。