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《散歩道でさんぽ》  道草76号より

2015613 日更新

<散歩道でさんぽ>
いくつになっても誕生日はスペシャルデーです。しかしながら年齢を重ねるごとに、だんだん誕生日を言い出せなくなってきました。誕生日パーティーなんて照れくさいし、「何歳に?」と聞かれるのもちょっとうれしくないような気持ちです。でもどこかで誰かに小さい声で「おめでとう」と言ってほしいと思うジレンマ。そんな中、大きく祝ってくれるのが唯一家族です。我が家は5月生まれが多く、私もプレゼントを手渡しました。このサプライズプレゼントというのも誕生日ならではの嬉しいことです。2年前の私の誕生日のこと、家族へのプレゼントは買わない夫が、とても大きなダンボールを抱えて帰ってきました。「ずっと前から欲しがってたやろ?」と手渡された箱。ずっしりとした重みが期待をさらに膨らませます。「何だろう何だろう」といそいそ開ける私。「きっと喜ぶと思って・・」とにっこり答える夫。そうして包みの中から現れたのはなんと!“お風呂の蓋”ではないですか。確かに「古くなったから新しいのが欲しい」と言ってたので、夫は何も間違っていないのですが、なぜか残るこの胸の何とも言えぬモヤモヤした感じと夫のしてやった顔。でも偉い嫁は笑顔で言いました「嬉しいわあ。ありがとう。ずっと欲しかったねん」と。そもそも・・お風呂の蓋は私の物なのか?という哲学的な疑問すらも湧きましたし、大きいつづらを開けた舌切雀のおばあさんのことも思い出しました。忘れられない誕生日です。そして今宵もプレゼントのじゃばら蓋を有難く開けて入浴します。
                                                       東岸佐優里